梅毒を始めとする性感染症とはいったいどんなものか、全体のイメージをつかんでもらえたらと思います。

1.性感染症とは

一般には、性行為によって感染する病気の総称を性感染症と言います。中には膣カンジダ症のように体調不良で発症したり、性行為以外の感染ルートを合わせ持つ性感染症もありますが、主な感染ルートは性行為です。性行為にはオーラルセックスのような挿入を伴わない性的接触も含みます。

 

2.性感染症という呼び方

現在では「性感染症」という呼び方をしますが、以前は「性病」という呼び方を使っていました。適応する法律も、かつては「性病予防法」でしたが、1998年に法改正があり、現在では「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」と言う長い名前の法律に変わりました。(感染症法と短縮して呼ばれることもあります。)しかし、ネット上ではまだ「性病」と言う表現の方が多いように思います。

医学的には英語の頭文字をとって、STDとかSTIとか呼ばれることもあります。

●STD(Sexually Transmitted Disease)

●STI(Sexually Transmitted Infection)

 

3.性感染症の動向

専門書などを見ていると、たまに出てくる表現は、

「昔梅毒、今HIV」

というフレーズです。性感染症がまだ性病と呼ばれた時代、対象となる性病は4つでした。

●梅毒
●淋病
●軟性下疳
●第四性病(鼠径リンパ肉芽腫 そけいりんぱにくげしゅ)

この4つです。中でも梅毒は感染すると根本的な治療法がなく、長い年月をかけて重症化し、最後には命を落とす致死的疾患でした。

それが1940年代の後半からペニシリンなどの抗生物質が登場し、致死的疾患ではなくなりました。HIV感染も、1990年代の半ばくらいまでは感染すると効果的な治療法もなく、最後は死に至る恐ろしい病気でした。ちょどかつての梅毒と同じだったのです。この梅毒とHIVは治療せずに放置しておけばかなり高い確率で死に至ります。

どちらも現在では医療が進化して、梅毒は完治出来るし、HIVも完治は出来ないまでも、HIV増殖を抑え、エイズ発症を防ぐことが出来るようになりました。しかし、それも早期発見、早期治療が大事です。

さて、性感染症の感染者数がどんなふうに推移しているのか、その動向はちゃんとチェックされています。前述のHIVと梅毒の2つの感染症については全数報告といって、全国どこの医療機関で見つかったても7日以内に都道府県知事へ届け出ることが法律で義務づけられています。従って、HIVと梅毒については国内の新規感染者、患者数は全数把握されています。それだけ社会的な影響も大きいということでしょうか。

一方、クラミジア感染症、淋菌感染症、尖圭コンジローマ、性器ヘルペス、この4つの性感染症は定点報告によって感染動向をチェックしています。定点報告というのは、全国に970ヶ所ほど予め決められた指定医療機関があって、そこでこの4つの性感染症患者が見つかると報告されてるようになっています。

従って、HIVや梅毒のように、全ての患者を把握しているのではなく、あくまでも指定医療機関で診察を受けた患者のみ分かる仕組みになっています。いわば抜き取り検査で全体の動向を類推しているようなものです。

ではここで動向調査の方法をもう一度まとめておきます。

●全数報告
HIV・梅毒。全国、どこで感染者が見つかっても全数7日以内の報告が義務付られている。

●定点報告
クラミジア・淋菌・性器ヘルペス・尖圭コンジローマ。指定医療機関で見つかった感染者のみ報告。全数は不明。

では、厚生労働省の1999年から2013年までの統計データから、それぞれの性感染症の大まかな動向をご紹介しましょう。以下に感染者の推移グラフを掲載します。

◇HIV/エイズ 1999年から2014年までの全数報告データによる

通期HIV・エイズ動向
グラフ1.新規HIV感染者と新規エイズ患者の動向

グラフを見てお分かりのように、新規HIV感染者がここ数年ほど横ばい傾向になっています。しかし保健所などのHIV検査受検数も減っており、本当にHIV感染者が減少しているのか、単に検査で見つかっていないだけなのか、結論が出ていません。

そして新規エイズ患者については増加の一途をたどっており、毎年記録を更新中です。早期にHIV感染が見つかればエイズ発症を防ぐことが出来るだけでに残念な結果となっています。

◇梅毒 1999年から2013年までの全数報告データによる


グラフ2.梅毒

梅毒はすっかり忘れ去られた過去の病気だと思われがちですが、実はここ数年、感染者は急増しています。梅毒はHIVとの重複感染が多く見られ、その場合には梅毒の進行が速くなったり、重症化したりします。

◇淋菌感染症 1999年から2013年までの定点報告データによる

淋菌感染症
グラフ3.淋菌感染症

このグラフを見ると、感染者数は2002年をピークにここ数年は減少しているように見えます。しかし、定点報告データだけで、本当に感染者が減っているのかどうか、断定はできないそうです。近年、オーラルセックスの普及により、喉への感染が増えています。

◇クラミジア感染症 1999年から2013年までの定点報告データによる

クラミジア感染症
グラフ4.クラミジア感染症

クラミジア感染者は国内に100万人以上いると言われています。このグラフを見ると、2002年をピークに減少傾向にありますが、それでもなお最も感染者の多い性感染症です。またクラミジア感染症は女性の80%、男性の50%に自覚症状がなく、無症候の感染者が多数いると言われています。女性が感染しているのに気が付かず重症化すると、不妊症や早産、流産の原因となることがあります。

◇尖圭コンジローマ 1999年から2013年までの定点報告データによる

尖圭コンジローマ
グラフ6.尖圭コンジローマ

ここ数年はほぼ横ばい状態ですが、特に20代前半の若い女性に感染者が多くなっています。病原体はヒトパピローマウイルス(HPV)で90種類以上あると言われています。尖圭コンジローマの原因となるウイルスはPHV6型、あるいはPHV11型です。悪性のHPV16型や18型は子宮頸ガンの原因になるとされています。

◇性器ヘルペス 1999年から2013年までの定点報告データによる

性器ヘルペス
グラフ7.性器ヘルペス

ここ数年は男女共に横ばい傾向にあります。性器ヘルペスはHIVとの関係が深く、性器ヘルペスを発症して局部に炎症や潰瘍があると、HIV感染の確率が非常に高くなります。またHIVに感染して免疫力が低下すると性器ヘルペスを発症しやすくなります。

 

4.性感染症の病原体

性感染症の病原体は大きく分類すると、ウイルス、細菌、真菌(カビ)、寄生虫/原虫、この4つになります。
それぞれ代表的な性感染症としては、

●ウイルス・・・HIV、B型肝炎、尖圭コンジローマなどがあります。

●細菌・・・クラミジア感染症、淋菌感染症、梅毒などがあります。

●真菌・・・膣カンジダ症

●寄生虫/原虫・・・トリコモナス症、ケジラミ症、疥癬などがあります。

 

5.性感染症の感染ルート

性感染症の感染ルートは主に次の3つです。

●性行為感染
性行為によって感染者のウイルスを含む体液が、相手の粘膜部に接触することによって感染します。感染の可能性がある体液とは精液、膣液、母乳、唾液、血液などを言います。(病気によって異なります)

粘膜部の場所としては、陰茎、膣、肛門、尿路、口腔(口やのど)などがあります。コンドームの使用が感染予防には効果的です。

●母子感染
産道感染や母乳による感染などがあります。妊娠中に感染が分かれば治療によって感染確率をかなり下げることが可能です。

●血液感染
かつては輸血や注射器などから性感染症が感染したことがありました。現在の日本の医療環境ではまず起こりません。この他にも薬物常用者の注射器回し打ちや、針刺し事故などがありますが、日本ではまれなケースです。

6.検査や治療

性感染症の検査には、検体として血液や尿、患部の分泌物などを使います。また、検査方法としては病原体そのものを見つける検査と(抗原検査や核酸増幅検査)、病原菌が感染することによって生まれる抗体を見つける検査(抗体検査)などがあります。

ほとんどの性感染症は早期に見つかればいい薬が開発されていて完治できます。ただ、HIVは未だにいったん感染するとそれを完全除去することはできず完治しません。しかし、かつての致死的疾患からエイズ発症を抑える(遅らせる)ことはできるようになり、死亡者は激減しました。

性感染症は何といっても早期発見に尽きます。

7.性感染症で注意すべき点

性感染症で特に注意すべき点は以下の3点です。

1.感染初期に自覚症状がない病気が多くある
自分では気が付かないうちに感染し、誰かにまたうつしてしまう二次感染が起きます。むろん、本人も感染がどんどん進行し重症化する危険があります。

その典型はHIV感染です。自分の感染に気が付かなければ非常に高い確率でエイズを発症します。手遅れにならないためには早期発見、それには検査です。

HIV以外の性感染症も発見が遅いと死までは至らなくても重大な障害を引き起こすことがあります。自覚症状がなくても感染の可能性に心当たりがあれば、まずは検査を受けることをお勧めします。

2.複数の性感染症による重複感染はより危険
例えばHIVと梅毒が重複感染すると、梅毒の進行が速くなったり、重症化することがあります。あるいはHIVとB型肝炎、C型肝炎が重複感染すると、致死率が高くなったり肝炎の慢性化率が高くなることがあります。

従って性感染症の検査を受けるときには重複感染も考慮して検査を受ける方が安心です。考えてみれば性感染症は感染ルートが共通なので、どれか1つが心配なら他の性感染症も心配は当然です。

3.HIV感染のリスクを高める性感染症がある
梅毒、クラミジア感染症、性器ヘルペス、淋菌感染症などは、感染しているとHIV感染のリスクも高くなります。これは患部が炎症したり潰瘍が出来てそこからHIVが侵入しやすくなる為です。やはり何といっても一番怖いのはHIVとの重複感染です。HIV感染予防の観点からも早期に検査を受ける必要があります。

これらの性感染症については泌尿器科や婦人科、あるいは保健所で検査を受けることになります。でも、どうしてもあなたが病院や保健所には行けない事情があるなら、あなたの自宅で検査も可能です。

■梅毒はHIVと重複感染の例が多く、重症化したり進行が早まることがあります。
・STDチェッカー TypeO(男女共通)
梅毒・HIV・B型肝炎 重複感染が多いので同時検査がお勧めです。

■梅毒が不安ならこれらの性感染症は大丈夫ですか?みな同じ感染ルートです。
・STDチェッカー TypeE (男性用)(女性用)
梅毒・HIV・B型肝炎・クラミジア・淋菌 5つの性感染症がまとめて検査可能です。

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